2025/10/8
活動報告
開催レポート|南三陸イヌワシ野生復帰フォーラム イヌワシ・アゲイン!

2025年9月27日、南三陸イヌワシ野生復帰フォーラム イヌワシ・アゲイン! を開催しました。当日は90名を超える来場者で、用意した席が足りなくなるほどの盛況となりました。ご来場の皆さま、関係機関、そして日頃から温かく応援してくださる地域の皆さまに、心より御礼申し上げます。皆さまの言葉に背中を押され、このプロジェクトの意義を、改めて強く自覚する時間となりました。
イヌワシと南三陸の歩み
冒頭、共催者である南三陸町 佐藤仁町長は、南三陸の町鳥がイヌワシであること、1955年に翁倉山で繁殖を確認した立花先生の功績に触れました。さらに、志津川愛鳥会を立ち上げ、町内の子どもたちに野鳥や自然に親しむ素地を育んだ田中先生の取り組み、そして志津川愛鳥会出身で、10年間草の根で生息環境再生の取り組みを続けてきた鈴木会長の尽力へと続く「イヌワシと南三陸の歩み」が語られました。イヌワシは地域の誇りであり、次世代へ引き継ぐべき資産であることが、会場全体で改めて共有されました。
イヌワシの現状と南三陸での意義
続いて鈴木会長から、イヌワシの生態と日本の個体群の現状について説明がありました。日本は世界の分布域の端に位置し、温暖多湿の森林に暮らす日本のイヌワシは、深山幽谷の営巣環境と、人の手によってつくられる「開けた狩場」の双方を必要とします。かつては300ペア規模の生息が見込まれた一方、現在はその約3分の2まで減少していると見られます。背景には、茅葺屋根など、草を利用しなくなったことによる草原の縮小や、国産木材利用量の低下による伐採地の減少が、狩場消失の要因として指摘されました。将来的に南三陸地域にイヌワシが再定着することは、若い個体の移動を通じて周辺地域にも波及し、国内個体群の底上げにつながる意義が強調されました。

プロジェクトの全体像
最後にプロジェクト事務局の野口氏から、国内の動物園で繁殖した個体を3年間で3回放鳥し、技術開発を進めるとともに、南三陸での定着を目指す計画の全体像が示されました。放鳥後はGPS等も用いて採餌・ねぐら・長距離移動を継続的にモニタリングし、基礎データを蓄積します。同時に、民有林と国有林、多様な森林利用者と連携し、草地や伐採跡地など「開けた場所」の維持・創出を進めます。一方で、野生下における一般的な幼鳥の生存率を考えても、放鳥が成功したとしてもその後に落鳥するリスクがあること、国内初の挑戦であるがゆえに課題が多いことにも言及しました。それでも、これまで国内でほとんど蓄積のない若齢個体の生存率や行動に関するデータを得ることで、他地域の保全活動にも確実に寄与し得る――この点に本プロジェクトの大きな意義があると結びました。

地域への感謝と決意
主催者を代表して鈴木会長は、「『イヌワシのいる町』としての誇りを取り戻したい。繁殖できる環境をふるさとに残していく」と思いを語りました。プロジェクトメンバーでもある秋田市大森山動物園の小松守名誉園長は、「動物園のイヌワシは元来“野生”。野生復帰はイヌワシへの恩返しであり、動物園としてできる限りの協力をしたい」と力強く述べました。また同じくプロジェクトメンバーで極東イヌワシ・クマタカ研究グループの代表を務める井上剛彦氏は、「賛否があることは承知しているが、今動かなければ絶滅は現実になる。地元の皆さまの応援こそ最大の力だ」という決意を語りました。

改めて、会場にお越しくださった皆さま、運営にご協力いただいた行政・教育機関・林業関係者、メディアの皆さまに深く感謝いたします。皆さまから寄せられた期待と温かなまなざしに、私たちは大いに勇気づけられました。南三陸から始まるこの挑戦を、責任をもって着実に前へ進めてまいります。
